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> ぷらっとフォーム > 鶴岡市三瀬の「森の隠れ家」


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Mr.e-yama
photographed.


−閉館ユースホステルを生かし夢づくりの場に−


 「森の隠れ家」つるおかユースホステルの再開はなにげない一本の電話から始まった。「もしもし、鶴岡の菊池と申しますが、鶴岡ユースホステルの現況についてお伺いしたいのですが?」、「江釣子と申します。鶴岡ユースホステルは現在閉館しているのですが、ペアレントとして運営したいのですか?」。

 私にとっては想像以上の反応であった。これがきっかけとなり、鶴岡市三瀬海岸、気比神社そばの小高い丘に位置する収容人数六十名、総面積800uにもなる「つるおかユースホステル」が再開にむけて動き出すこととなった。

電話に最初に出られた江釣子氏は、(財)日本ユースホステル協会の部長で、鶴岡ユースホステルの最初のペアレント(管理人)でもあった。

 このユースホステルは三年前まで(財)日本ユースホステル協会直営であったが、来客者の減少で経営が成り立たなくなり、閉館に至った。さかのぼると、このユースホステルが建設された約三十年前には若者が日本国内を巡り、地域の自然や歴史、社会を学び、体験する「旅」が盛んであった。


山形大学大学院農学研究科修了。
2000年、つるおかユースホステルを協働する市民と共に「森の隠れ家」として再建。
現在、環境教育や自然体験のプログラムを作成、実行中。鶴岡市在住。
森の隠れ家 つるおかユースホステル 


菊池良磨 ryouma kikuchi

実際、開館した当初は年間三千人から多い年で六千人以上もの来客があり非常ににぎわったと伺う。しかし閉館する四年前には年間千人にも満たない状況であった。

 このような社会的背景で、あえて私たちがこのユースホステルを再開しようとするのには、ここが自然美しい環境に囲まれ、交流・宿泊型の構造を持ち、宿泊料金が安価であるという利点があり、以下のような新たな活用目的が考えられていたからであった。
@自然観察・体験など環境教育の施設として活用する
A多様な能力を持つ人々のつながりを構築する交流を進め、新たな活動や夢を生み出す
B講座、映画上映会、研修等、自由で創造的な市民活動の場とする
C多くの無償協力者を集め、非営利運営を展開し、みんなで共創していく
というものであり、これらの活動をこの「つるおかユースホステル」を舞台に花開かせようというものであった。

 ここで、次に問題になるのが、「人材」であった。施設の補修にしろ、再建の資金を集めるにしろ、一人ではなかなか進まない。協働してくださる方々を募集することとなった。まず、核となる「つるおかユースホステル運営委員会」が結成された。会員は飯野昭司氏、伊藤おのいち氏(代表)、加藤清輝氏、小松幸雄氏、小生の五名で、ほかにオブザーバーとして、誰でもが参加できる会とした。改修作業の方は、ボランティアを募り、地域の協力者、国際ワークキャンプ、山形大学の学生などに手伝っていただいた。

 とくに国際ワークキャンプは国内・海外から来訪し、延べ四十名が一日から長い人で二週間以上も泊り込んで手伝ってくださり、たくさんのボランティア、運営委員と共に、昼は壁塗りや草刈り、掃除、ゴミ出しなど共に働き、夜は更けるまで話し込み、非常に充実した日々を過ごした。


 他方、資金集めは一口一万円または五万円の会員制で三年後から無利子で返却するというシステムで再建資金を募った。過去にこのユースホステルにかかわった方々などにも伊藤氏が声がけをしてくださり、合計で七十名もの協力者から三百万円近くが集まった。また運営・企画に関しては、加藤氏、飯野氏、小松氏、小生が立案し、いかにこの施設を意義あるものとして、かつ、経営的に成り立つものとして運営していくか、幾度も議論が繰り広げられた。

 さらに三年間放置していたため、雨漏りや、破損箇所が多かったが、施設改修は小松氏が調査から施工、最終確認まで中心的に進められた。こうしてたくさんの人々の能力が発揮され、信じられないような奉仕的な尽力で、このユースホステルは、みんなの「森の隠れ家」としてよみがえった。
 整備を進める一方、この施設のかなめである市民活動や環境プログラムの企画・制作が急務になった。施設ができても、活用する目的や、人が無くては意味がない。そこで、再開する前に、環境教育の講座を開き、これからの環境活動の方向性と仲間を作っていく事を狙い、「森の人」講座が企画された。これは八回連続の講座で、森に暮らす山人や、森の問題に取り組んでいる方を講師として招き、森林減少の問題や、林業の課題、森の暮らしの豊かさなど、お話をお伺いし、交流し、共に森歩きや炭焼きなどフィールドワークで活動するというものであった。

 この講座には定員四十名に対し連続受講者六十名、そのほかも加え延べ百名以上が参加し、一つの大きな人脈の流れが生み出された。この講座のほかにも、「地平線会議|報告会」、「ロマネコンティ|演奏会」などの市民活動が自主的に企画運営され、加えてフェアトレードや野草の押し花のお店が開かれ、この「森の隠れ家」は多彩な色を帯びようとしている。


 市民活動は今まで、地域存続のための活動や福祉活動が主流であったが、近年は、自然保護、環境問題、第三世界の問題に取り組む活動や、劇、木工、スポーツ、音楽、絵画など自由で創造的な市民活動が急速に発展している。NGO(民間非政府組織)やNPO(民間非営利組織)に見られるように、活動に「使命感」「創造性」「経済的自立」「非営利」が感覚として内包され、今の社会の中で本当の「豊かさ」を求めて試行錯誤しつつ、成長する姿勢が表されている。

 しかし他方で、市民活動の問題として、新たな活動の起動、核となる仲間集めや多様な能力を持つ人材の確保、活動・経済力の維持・拡大などが難しいことがあげられる。このような現状を踏まえ、市民活動がこの「森の隠れ家」で二重構造システムを見せながら発展していくことを考えている。これは、二重システムの一階部分では、何かを持っている多くの人々が自由に交流し、情報交換や人間交流を進める中で人脈や可能性の網を広げ、そこで何らかの活動を見出した任意のグループや新たな参加者が、二階部分でその活動の計画・運営を進めていくというものである。

 こうしてここに携わる方々がそれぞれの夢を持ち込み、発展的にかなえていけるようになる事が、私たちの望みである。夢は望み、動きつづければ必ずかなうことを証明した数学者もいる。夢のある現実を生きていきたいと思うのは無理であろうか。みんなでようやく漸く立ち上げた「森の隠れ家」はトム・ソーヤの樹上のあばら家のように、荒削りで未完成だが、みんなの心の中には光がきらめいている。
【出典:「Future SIGHT9号」(2000年夏 発行)】

未来に負の遺産を残さない生き方を

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