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> ぷらっとフォーム > 米粉100%のパン「LoveRice」


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photographed.


米粉100%のパン『Love Rice』

 「Love Rice」(ラブ・ライス)は、日本の農業の現状を憂える人々の願いから生まれた商品であると言える。

 平成13年、私が山形大学工学部の小山清人教授の秘書をしていた時に、ある県内の企業の方からこんなご要望を承った。「この30年以上、日本の米の消費量は減るばかり。米の消費を拡大して国内の米農家の支えになるような新しい商品はできないでしょうか」

 食糧庁のデータによると、米の年間1人当り消費量はこの40年間で約120kg(1960年前後)から約60kg(2000年)へと半減している。加えて、消費量の減少にひきずられるように、生産量も減少の一途をたどっている。米の生産減少を食い止めるためには、消費の拡大が必要である。
パウダーテクノコーポレーション有限会社取締役社長。
住所:米沢市城南4丁目3−16
山形大学ベンチャービジネスラボラトリー内
1963年5月和歌山市生まれ。2002年2月山形大学大学院VBL(ベンチャー・ビジネス・ラボラトリー)プロジェクト研究員に就任。6月パウダーテクノコーポレーション有限会社設立。
お問い合わせ先:パウダーテクノコーポレーション有限会社(山形大学大学院VBL内)
Tel:0238-26-3483 
Fax :O238-26-3499
E-mail:m-higashino@nifty.com




東野 真由美
mayumi higashino
パウダーテクノコーポレーション(有)
mayumi
higashino

 さて、話を「Love Rice」に戻すことにする。先に述べたようないきさつから、私を含めた研究グループで、早速、米を使った新商品の開発に取り掛かった。ところが、当時、すでに新潟県において、米の粉によるパンが開発されていた。さすがは米どころ新潟ならではの発想力と言うベきであろうか。ただ、そうかと言って簡単に新商品の開発をあきらめていてはしょうがない。また、新潟県と同じ商品を作っていたのでは、全く新鮮味も独自性もない。そこで、同じ米粉100%によるパンを作るとしても、山形県ならではの独自性や新規性を出すにはどうしたらよいかを考えることにしたのである。

 従来の製パンに関する本の記述によれば、米の粉や大麦の粉にはグルテンが含まれていないため、パンを作ることはできないとされていた。通常、パンを作る場合には、ミキシング、発酵、焼成(しょうせい)といった工程を通るが、その際に、膨張剤にはイーストを用いることがほとんどである。グルテンは、イースト菌の働きによって発生した気泡が大きく成長するときに適切な粘度を有しているため、気泡が破けて炭酸ガスが抜けてしまうことを防いでくれる。さらに、焼成(しょうせい)の段階では、出来上がったセル質を保つ骨格の役割を果たす。小麦粉、とりわけ輸入小麦粉(強力粉)には、このグルテンが豊富に含まれているため、ふっくら感のある良好なパンを作ることができるのである。

 したがって、もしグルテンを持たない米粉を使って良好なセル質を持ったパン食品を作ることができれば、従来からの考え方を覆し、しかも新潟県とは異なる(新潟県の場合には、小麦粉成分であるグルテンが加えられている)米粉100%のパンを誕生させることができると考えた。

 しかし、実際には、グルテンを加えずに米の粉を膨らませるということはなかなかうまくいかなかった。1種類の米の粉だけでは、うまく膨らませることができないのである。
 


 私が何度も失敗を重ね、非常に悩んでいた折、山形大学の小山教授や西岡昭博助手、現山形大学VBL(ベンチャー・ビジネス・ラボラトリー)の助手で、当時山形県企業振興公社のコーディネーターをしていた高橋辰宏氏などからあるアドバイスをいただいた。先生方が専門とする高分子(プラスチック)の分野では、数種類のプラスチック原材料を混ぜ合わせることにより、1種類の原材料では得られない特性が現れることがよくあるというのである。しかも、プラスチックの発泡材(発泡スチロールに代表ざれる)を作る場合には、ドロドロに溶かした原材料に炭酸ガスを入れて発泡させるそうなのだが、これは従来の製パン工程で言えば、小麦粉の生地にイーストを混ぜて発酵ざせ、生地を膨らませるという考え方に基本的に共通する部分があることに気付いたのである。

 それからは、実験は順調に進み始めた。1種類の米粉ではなく、数種類の米粉を混ぜ合わせ、適切なミキシングと発酵状態を保つことで、米粉100%でも良好な発泡状態を有するパンを作ることができるようになったのである。後は、毎日、山形大学VBLの実験室に通ってデータの収集を繰り返した結果、平成13年末に米粉を主原料とするパン類に関する特許を出願するに至った。

 平成14年の4月末には(有)ベーカリー中村屋新丸の内店の店長、志田清志氏のご協力をいただき、米沢において「Love Rice」のテストマーケティングを行うことができた。そして、6月には、この技術を核として山形大学VBL初の企業を立ち上げることになった。

 ところで、粉は何も米の粉に限られるものではない。大豆、大麦、そばなどほとんどすべての穀物は粉として取り扱うことができる。「パウダーテクノコーポレーション」という会社名からもお分かりになられると思うが、弊社は先に挙げた穀物の粉を用いた新商品の開発に現在も取り組んでいる。なぜならば、これらの穀物は、そのほとんどを輸入に頼っているという問題があるからだ。外国産の原材料は安いからいたしかたない、消費者はより安い製品を望んでいる、と主張される方もおられるだろうが、このような考え方だけでは済まされないと私は考えている。日本の食料自給率、農業の重要性を考えた上で、高い原材料でも耐えられる、安全性の高い、健康でおいしい食品を作り出すことにより、日本の食文化、農業の復権を図ることができればと願っている。

 会社経営に限らず、何をするにしても「あきらめず」に「人とのつながりを大切にして欲しい」と思う。製パンの科学書に書いてあったことを素直に信じ、「米の粉ではパンを作ることができない」と、初めからあきらめていたなら、米粉を主原料とした「Love Rice」はできなかった。

 最後に私に米を使った新商品を作ることができないかと話してくれた方、プラスチックの発泡に関するアドバイスをしてくれた小山先生をはじめとする山形大学の藤井先生、高橋先生、西岡先生、忙しい日々の業務の中で試作、商品開発からテストマーケティングまで認めてくれた志田店長および中村屋の中野社長、起業の基礎教育をご教授くださった事業化セミナーの諸先生方、その他にも多くの方々がご支援くださり大変感謝の思いでいっぱいである。出会ったこれらの人々とのつながりがなかったら、米を用いた新商品開発はおろか、会社を起こすことなど出来なかったと思う。出会わせていただいた一人ひとりの方を大切にしたい。皆様に支えられつつ事業をさせて頂いて、人々の温かさを身にしみて感じ感謝する日々である。
【出典:「Future SIGHT19号」(2003年冬 発行)】
「伝統産業をプロデュース」

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