2016年3月 辻蕎麦便り

 弥生。

早春という言葉がぴったりの月です。
首都圏などでは、梅が満開で、早いところではぼちぼち桜の便りも聞かれるころではないでしょうか。
そうはいっても北国山形、例年のこの季節ならまだ一面が真っ白な世界です。

 「日本の気象は近年、年を追うごとに荒々しさを増している」という気象関係者の一文を目にしたことがあります。
確かにゲリラ豪雨とか竜巻といった言葉を耳にすることはそれほどありませんでした。
原因はいろいろあるのでしょうが、それはともかく、今シーズンは山形市や天童市の周辺にとっては、荒々しいどころか実に優しい冬でした。
こんなに雪の少ない冬は観測開始以来初めてではないでしょうか。
1月18日以前はほとんど雪なし状態でした。
その後一気に30㌢ほど積もりましたが、2月14日から急激に解け出し、19日には観測値なしに。
2月中旬といえばせっせと道路の除雪作業をしている時期ですが、ことしは雪がほとんど見当たらず、地面から草花の芽が顔をのぞかせ始めています。
「こんなに早く芽吹いて大丈夫かい。これからだって氷点下の日がやってきて、凍みちゃうよ」と思わず声をかけたくなる感じです。
梅も3分咲程度にはなってきています。積雪期間がわずか1カ月などというのは本当に信じられません。

 急激に雪が解け始めた2月中旬にちょっと珍しい体験をしました。
去年の11月20日過ぎに、大きめのプランターにホウレンソウの種を蒔きました。
時期的には1カ月以上遅れてしまったのですが。
支柱とビニールの袋を加工しミニミニ温室のように仕立てました。
いくら温室もどきのプランターで育てているといっても、気温が急降下する時期で、芽吹いたままでじっとして動かない。
3月末か4月初めころにならないと伸びないだろうなと思っていたら、雪解けに合わせるように急成長。
あっという間に密植状態になりました。
7、8㌢に育ったものを徹底的に間引きしたら、両手で2つ分ちょっとありました。

 おひたしでなく、サラダで食べてみてびっくり。
多少のえぐ味は覚悟していたものの、それが全くありません。
グルメレポーターのように上手に表現できませんが、みずみずしいし、しゃきっと歯ざわりも良く、まさに“早春”を味わっているような気がしました。
自分で育てる人以外には手の届かない貴重な味です。首都圏などでは、プランターに種を蒔くだけなので、一度試してみてはいかがでしょうか。

 この気象、美味しいソバができるように作用してくれることを願っています。