2016年8月 辻蕎麦便り

葉月。

先月も紹介しましたが、熊騒動は治まるどころか、ますますひどくなるようです。
頭数が大幅に増え縄張り争いが激しくなっているところに、ちょっと山を下りれば美味しいものがふんだんにあるのですから熊にはこたえられないでしょう。

サクランボに始まりスイカ、桃、ブドウ、ラフランスと果樹王国山形は熊にとって天国かもしれません。
おまけにいずれも最高級品ぞろいときています。
しかし当然のことながら果樹農家は怒り心頭に発しております。
1年間丹精込めて育て上げ、ようやく出荷寸前までこぎつけたところで、熊公に食べられてしまうのですから。
しかも美味しいものだけを選んで食い荒らす。
スイカは中の赤いところを丁寧に食べ尽くし、皮だけを見事に残していくとか。
人間より食べ方はきれいだ、などといったことを耳にしたことがあります。

農家も指をくわええて被害に遭うのをみているわけにはいきません。
さまざまな防護策を施しています。
そういつまでも甘い汁、いや甘い味を満喫できるわけはありません。
そのうえ木の実が凶作とあっては、秋が深まるにつれ熊も生きるのに必死で狂暴化しかねません。
いまから心配です。

などと書きながら、先月末に今年初めてワラビ採りに行ってきました。
昨年まで熊の存在を気にしたことは全くありませんでしたが、さすがに連日の目撃報道に、ひょっとしたらという不安がよぎります。
今年は雨不足で、ワラビの出来具合はあまりよくありませんでした。
ワラビも伸びていなければ、雑草もさほど伸びていない。
しかし熊対策にはこれが大いに役立ちます。
熊との遭遇でもっとも危険なのが、ばったり顔を会わせること。
双方がパニックに陥って予測のつかない行動にでるそうです。
ある程度見通しの効くところにいればそうした危険は避けられます。
万々が一出会ったら、ワラビを包む新聞紙に火をつけて撃退しようとライターも持参しました。

採り始めは周囲をしっかり見回し慎重に歩を進めましたが、それも束の間。
藪の中にワラビらしきものがあればかき分けて入っていくし、眼の前に点在するワラビに導かれるように無意識のままに上へ上へ。
熊のことは時折り頭をかすめるが、「欲と道連れ」になればたちまち意識の外へ。
熊よりも30度を超す暑さに阻まれ1時間半ほどで下りざるをえませんでした。
過去に経験したことがないはらはらどきどきのワラビ採り。
量は少なかったが、お酒と蕎麦のお供として例年にない格別の味わいでした。

>>やまがた辻蕎麦HP ブログより