2018年6月~7月 辻蕎麦便り

水無月。

毎年のように紹介していますが、やはりこの時期の山形といえばサクランボにつきます。
全国のサクランボの約70%を生産する最大の産地ですから、ちょっと郊外に出れば、濃い緑の葉の間にルビー色の愛らしい球形が揺れる景色を至る所で目にすることができます。

今月に入って天候不順に見舞われ、肌寒い日が続いたりしました。
サクランボの出来を心配していましたが、天候の割には順調に生育したようで、収量に影響はないとのことです。
月末を迎え、サクランボの代名詞のような「佐藤錦」の収穫が終わり、新たな有力品種「紅秀峰」に作業が移っております。

サクランボのシーズンになると必ず思い出す“出来事”があります。
25年ほど前のことでしょうか。
高速道路の東北自動車道から宮城県で枝分かれし、山形市や寒河江市など中央部を通り庄内と結ぶ山形自動車道が寒河江市まで部分開通しました。
ある日曜日、ここに宮城県や福島県などからのサクランボ狩りの車がどっと押し寄せたのです。
「凄まじい渋滞」などという言葉を幾つ重ねても足りないくらいの状態になったのです。
高速道路上に延々と続く車の列が全く動かない。
何が起こったのかと車から出てきて様子を見る人たちの影が次第に濃くなっていったというのです。
一番困ったのはトイレということをニュースで知りました。
原因はサクランボ園の駐車場不足のようでした。
当時はまだそれほど観光果樹園が多くなく、サクランボ狩りの車を受け入れる駐車場はあっという間に満杯に。
入れ切れない車は高速道路からのアクセス道に立ち往生し、その後続の車は高速道路から出られないということになったようです。
今じゃ大型バスがずらりと並ぶ駐車場もあり、あんな状態を招くことなど全く考えられませんが。
地元では大ニュースになりました。

天候不順といえば、今年の山形は完全な雨不足。
梅雨に入って以降の山形県の降水量は平年比の20%ほど。
ささやかな家庭菜園は完全に干上がって、成長する作物を支える支柱も地面が硬すぎて容易に突き刺せない。
野菜の生育にも影響が大きく、せっかく発芽したにもかかわらず途中で枯れてしまうものも。
毎日のように水を掛けていますが、なかなか地面に浸み込んでいかない。
しとしとと降る雨にかなわないんです。
連日天を見上げていても、一向に降る気配がない。
雨乞いをした昔の農家の人たちの心境が少し分かったような気がします。
もっとも昔の人たちは干ばつになれば生死の境をさまようわけですから、必死さは桁違いだったでしょうが。