2020年6月~7月号 辻蕎麦便り

水無月。

 「この畑で日本一の芋煮会で使用するサトイモを育てています」。
山形市落合にある山形市総合スポーツセンター入り口の道路を挟んで反対側にこんな看板が立っています。

 市街地を貫流する馬見ヶ崎川。
秋になれば河原の石を組み合わせたかまどが至る所に造られ、名物の芋煮をつくる煙が揺らめきます。
このメーンイベントが9月に行われる日本一の芋煮会。
「直径6.5mの大鍋には里芋3トン、牛肉1.2トン、こんにゃく3,500枚、ねぎ3,500本、味付け醤油700リットル、隠し味に日本酒50升、砂糖200kg、山形の水6トンを入れ、6トンの薪(ナラ材)で煮炊きします。まさに美味しさもスケールも日本一です」
と実行委員会のホームページにあります。
毎年テレビの全国ニュースで流れるので、ご覧になった方も多いのではないでしょうか。
もっともテレビでは直径6.5mのド迫力を感じるのは無理かもしれません。
今年は9月20日の日曜日に開催される予定でしたが、6月12日にその中止が発表されました。
冒頭の看板に書き込まれていた開催日も消されました。
原因は当然ながら新型コロナウイルスの影響によるものです。
こういう状況だから仕方がないと思う反面、関係者の気持ちを推し量るとやるせなくなります。
平成元年、1989年にスタートし今年で32回目だったのですが、中止は初めてです。
山形の人たちにとっては夏が終わり、食の秋が訪れたことを知らせるイベントでもあります。
スポーツセンター向かいの約20㌃の畑には、4000株のサトイモが植えられています。
例年なら地元の子供たちが実行委員会のメンバーやボランティアとにぎやかに植え付け作業を行いますが、ことしは大人だけでやっていました。
今はひと雨ごとに葉が大きくなってきていますが、こちらの見る目がそうなのかどこか寂し気に映ります。
全国で多くのイベントが次々と中止されていますが、こんなことは今回限りにしてほしいと願うのが関係者の等しい気持ちでしょう。
とにかく残念でなりません。

 全国一の生産量を誇るサクランボの収穫は佐藤錦を終え紅秀峰に移っています。
先月号でも紹介しましたが、新型コロナウイルスの影響で人手不足に陥り、収穫作業に支障をきたすのではないかと懸念されていました。
JR東日本の社員や県庁の職員などがボランティアで支援。
全国に向けて出荷作業に追われています。
サクランボシーズンもあと10日余り。
各農家が滞りなく作業を進められるようと念じております。

(2020/06/29)
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