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2021年4月~5月 辻蕎麦便り

以前、日本列島では春と秋が極端に短くなり、夏と冬がくっついてしまうのではないかと愚痴ったことがあります。
今年の桜前線の北上スピードを見ていたら一段とその感を強くしました。

山形市で桜の開花宣言が行われたのは2日でした。
山形地方気象台によりますと平年より13日早く、これまでで最も早かった昨年の3日を1日だけですが抜いて記録更新したそうです。
この周辺のお花見といえば4月20日前後が普通でしたので、まさに「えっ、もう咲いたの」といった感じでした。

桜の咲く中での小学校の入学式といえば、テレビや新聞の写真でお目にかかる首都圏などの光景と思っていましたが、いつの間にか山形の景色になっていました。
満開の桜の下を初々しい一年生が保護者と学校に向かう姿を見ると、「春」の訪れの嬉しさが2倍にも3培にもなります。
こんな雰囲気の中で入学式をやりたかったなぁ。
ちょっぴり羨ましかったりして。
そんなことを考えていたら、冬と夏のニュースが。

山形県の中央にそびえる月山で、10日にスキー場開きが行われました。
全国でも名だたる豪雪地帯の月山。
積雪は10㍍を軽く超し、冬期間はリフトも雪に埋もれて使えなくなり、スキー場として機能しないのです。
その代わりに4月から7月ころまで楽しめ、夏スキーとして多くの愛好者で賑わいます。
数年前までは中旬ころに除雪作業を始め、大型連休の前にオープンするというのが定番でした。
まさかこんなに早くなるとは。
3月からの除雪作業ではさぞかし大変なのではないでしょうか。

「初夏の味覚さくらんぼをどうぞ」。
生産量日本一の山形県ですが、有名ブランド「佐藤錦」発祥の地の東根市で22日、サクランボ狩りのためのサクランボ園が開園しました。
昨年は新型コロナの感染拡大に伴い、多くのサクランボ園で中止しました。
今年は万全の予防策を講じながら楽しんでもらうということです。
6月中旬まではハウスものですが、その後は露地ものに移行します。

桜が咲いたらジャガイモの植え時といわれています。
10日過ぎに種芋を購入しようとホームセンターに向かって唖然としました。
なんと無情にも「売り切れ」の張り紙が。
仕方がないので次へ、ここも同じ。
次へ。
5店舗目でようやく手にすることが出来ました。
お店の担当者に理由を聞いたところ、昨年の猛暑や水害などでジャガイモ栽培に被害が出て、種芋は例年の3分の1くらいしか確保できなかったということです。

その数日後、夏野菜の種を求めてホームセンターに行った時のこと。
店員に「ジャガイモの種がないけど。どうなっているの」と熱心に質問している初老の男性がいました。
同じように家庭菜園を楽しんでいるのでしょう。
説明を聞き終え「今年はダメか」とつぶやきながら肩を落として帰って行きました。
いつもならこの時期はまだいろいろな種類の種芋が並んでいます。
毎年植えているものが植えられない。
こうした人は結構多かったかも。
あわやセーフだった身だけにその寂しさは他人事でありませんでした。

(辻蕎麦 2021/04/28)

2021年3月・4月 辻蕎麦便り

根から滑り落ちた雪が軒下に積み重なり、その上にまた屋根から雪崩れてくる。
大人の背丈を超えるほどうず高く積み上がった雪の山。
これほどの量はいつ消えるのだろうかと呆然としたものです。
それも束の間、3月に入った途端に急ピッチで山が低くなりました。

中旬には、あれほどあったのがどこに行ったのと訝しく感じるほど少なくなり、そして待ち焦がれた土が姿を現しました。
田んぼも切り株が見えたと思う間もなく、白一色から茶色の世界が急速に広がります。
白と茶色のまだら模様の中で、なにやらうごめく白い塊が。
天童市の北隣の東根市の道路を車で走行中、前方の田んぼで雪が動いているのではないかと錯覚し、思わず停車してしまいました。
目を凝らしてみると、白鳥の群れです。
大群といってもオーバーでないほどの数が見渡す限りの田んぼでエサをついばんでいるのです。
500羽は軽く超しているようです。

毎年、この周辺で白鳥の姿を見かけますが、こんなに多くの群れは初めてです。
今冬の豪雪と何か関係があるのでしょうか。
白鳥たちは、田んぼの雪融けとともに、より北側の田んぼに移動していきます。
北帰行を前に、いかにたくさん食べて体力を蓄えるか。
われわれの目には優雅についばんでいるように見えますが、彼らにとってはシベリアまでの大移動に備え生死をかけた作業なのでしょう。
一般道から農道に入り、群れの直前まで車を進めても、何ら気に留めることなく嘴を動かしています。
それほど必死なのでしょうね。
無事に日本海を渡ってほしいものです。

ことしは例年になく桜の開花が早いようで、今月20日過ぎには太平洋側の花見の映像が流れるようになりました。
雪国にもようやく遅い春が訪れ、山形市のお城址の霞城公園内の梅も咲き始めました。
紅梅が先行しており、白梅の本格的な開花はこれからのようです。
それでも待ちわびた市民が次々に訪れ、花芯に顔を近づけてかぐわしい香りに目を細めていました。

公園内には約1500本の桜がありますが、当然のことながらまだ硬い蕾のまま。
このうち1400本余りが樹齢100年を超えるソメイヨシノです。
青空の下、蔵王の白い山並みをバックに咲き誇る光景も素敵ですが、城跡のお堀を埋め尽くす花筏は息をのむ美しさがあります。
かすかな風で次々に姿、形を変えていく様はいくらながめていても飽きることがありません。

新型コロナウイルスの感染拡大で、のんびり花見もままならない状況に。
こんな日々がいつまで続くんでしょうね。
1日も早く以前の日常生活に戻れるよう願わずにいられません。
(2021/03/29)