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2020年3月~4月 辻蕎麦便り

それにしても不思議な冬でした。
先月も触れましたが、いくら暖冬でも除雪作業を一度も行うことなくシーズン終了などというのは記憶にありません。
降りが強い朝は小1時間も費やす除雪をしなくて済むのですから嬉しい限りです。
雪国でない地域では毎年こんな感じで冬を過ごすのでしょうね。
うらやましくもあり、憧れていた世界を実感できたといったらオーバーでしょうか。

それでもいくばくかの雪は積もったのです。
山形地方気象台のデータによりますと、山形市内で今冬の最深積雪は7㌢でした。
これが2月に3回、3月に1回ありましたが、気温が例年より高いこともあり、あっという間に消えました。
一面が白い世界というのを連続してみることはほとんどありませんでした。
ちなみに前のシーズンの最深積雪は53㌢もあったのです。

雪国としては雪の少ない冬を有難がってばかりいるわけにもいきません。
スキー場、除雪車のオペレーターなど雪を相手に仕事をしている人たちがたくさんいるのです。
“変則”ということがいかに人々の生活に大きな影響を及ぼすかを再認識させられました。

暖冬で季節の移ろいもスピードアップしています。
わが菜園の片隅にある梅の古木は昨年より2週間も早く白い花を咲かせました。
水仙も早々に開花。
桜の蕾は今にも割れんばかりになっています。
迷惑なのは雑草。
この時期は土がたっぷり水分を含んで粘土状になっており、除草作業がままなりません。
それをいいことに縦横無尽にはびこっています。
野菜栽培に向けての作業が間もなく始まりますが、その前に雑草を片付けなければならず、見るたびにうんざりしています。
こうした中、ちょっぴり嬉しいのは、晩秋に採り残したままになっていたハクサイの茎立ちが食卓に春の香りと味を運んでくれることです。
晩酌のお供にぴったり。

桜花爛漫の候。
いつものこの時期ならまさにルンルンといったところでしょう。
しかし新型コロナウイルスが猛威を振るうこの春はそうした気分を一掃。
先の見えない真っ暗闇のトンネルに閉じ込められた感じです。
中国・武漢で発生した当時は、春節が終わるころには収まるのではないかと思っていました。
ところがあっという間に世界的規模で感染が拡大し、日々報じられる感染者や死者は想像を絶する数字になってきております。
専門家によると終息するまでには相当の時間がかかるということですが、1日も早く撲滅への道が開けることを願ってやみません。

(2020/03/29)

2020年2月~3月 辻蕎麦便り

如月。

「えっ、何これ」。
時折り訪れるJR山形駅近くの霞城公園。
全国で5番目の広さを誇った山形城の跡地です。
今は二の丸までしかありませんが、それでもお堀には満々の水をたたえ、江戸城門に匹敵するスケールともいわれる大手門など往時をしのぶには十分な風格を備えています。

 その満々のお堀の水が徐々に目減りし、2月に入ってとうとう底が見えるようになりました。
間もなく乾ききるのではないかと思わせるほどになっています。
特定外来種の駆除で環境庁も注目しているテレビ番組「緊急SOS 池の水ぜんぶ抜く大作戦」に参加したわけではありません。
自然に水が無くなっていったのです。
一体どうしたんだろうといぶかっていたら、地元の新聞が取り上げその理由が分かりました。

 お堀の水は管理している山形市が地下水を汲み上げて一定の水位を維持しています。
しかし冬期間は汲み上げるポンプが凍てついて破損する恐れがあるので、毎年休止しているということです。
もっともこの時期は、お堀の周囲は雪で埋め尽くされて自然に“給水”されるし、零下の気温が続けば水面に氷がはって水が蒸発することもなくなります。
ところが今年は全国的な暖冬。
山形も例外ではなく、真冬日はなんと2月6日の1日だけ。
雪は夜半から明け方にかけて降ったものが昼過ぎには消えてしまうということが数回あっただけです。
まさかこの雪国で家の周辺の除排雪をひと冬に1回もしないで済むなど考えもしませんでした。
これでは氷がはるどころではありません。

 お堀の水は春になったら元に戻るようです。
普段はほとんど目にすることのない城の石垣の最下部の様子を見ることができます。
基礎の部分のぐり石が石垣だけなく土手の下にもしっかり施されており、これは意外でした。
休日などは多くの市民が大手門前の橋のうえから興味深そうに観察しています。
歴代城主をはじめ先人たちもさぞびっくりしていることでしょう。

 今シーズンは全国どこでも暖冬異変があるのでしょうが、わがささやかな菜園でも。
今月20日過ぎにまだ冬の気配を残す菜園を眺めていたら、大人の小指の先ほどのかわいらしいフキノトウが2個並んで頭を出していました。
2月のフキノトウなんて全く念頭になかったので目の錯覚かと疑ったほどです。
例年なら雪の下か、ようやく雪が解けて土が顔を出したばかりの時季ですよ。

 こんなことが来年以降も続くのでしょうか。
雪に悩まされないのは実に嬉しいのですが、一方では、果たしてこれでいいのかなという感覚も頭をもたげてきます。

(2020年2月27日)