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2020年1月~2月 辻蕎麦便り

 睦月。

 初セリのご祝儀相場といえば、毎年、青森県大間港で水揚げされる本マグロの最高値に注目が集まります。
豊洲市場のこのセリには多くのマスコミが押し掛けますので、ご存じの方も少なくないでしょう。
今年は273㌔の本マグロが1億9320万円で競り落とされました。
昨年は確か3億円を超えていたように記憶しますが、それにしても驚きの値段です。
いろいろなメディアで扱われるので、宣伝費に換算すれば安いのかもしれませんが、それにしてもという感が否めません。

 初セリでその本マグロをしのぎ驚くような値がついたのが山形県の特産品のサクランボです。
以前にもここで紹介したことがありますが、夏と冬の環境を逆転させて育てたもので、辻蕎麦と同じ天童市内の農家が大田市場の初セリに向けて出荷。
500㌘の桐箱入り「佐藤錦」が80万円で落札されました。
昨年は35万円でしたから2倍以上です。そ
れぞれがグラム当たり幾らになるか、お暇なときに計算してみてください。
一気に2倍以上に高騰した理由をある新聞が、昨年の秋から初冬にかけて気温が高く着果が少なかったためと紹介していました。地球温暖化はこんなところにも影響しているのですね。

 暖冬異変のニュースが毎日のように流れています。山形県も例外ではありません。
スノーフェスティバルは次々と中止か大幅縮小に追い込まれています。
気象庁のデータによりますと、1月の真冬日はこのままいけばゼロのようです。
日々の最高気温がマイナスになる真冬日。
近年少なくなってきてはいますが、大寒の時期の1月でゼロというのはなかったように思います。
当然のことながら平地に雪はありません。

 今月中旬、天童市の西側を流れる最上川の近くを車で走っていたら、雪のない田んぼのあちこちでうごめいている白い集団を目にしました。最初は消え残った雪のようにも見えましたが、なんと幾つもの数十羽の白鳥の群れが落穂をついばんでいるのです。
いつもならこの時期、田んぼは雪で厚く覆われているのでこんな光景に出会うことは皆無です。
雪が消え始める3月中下旬の出来事なのです。
白鳥にとっては簡単にエサにありつけ、実にいい冬なのかもしれません。
エサを求めて東奔西走する必要がないのですから。
白鳥たちは北帰行を前にした水温むころに、海を渡る体力を蓄えるため必死についばむのが通例です。
車内からぼんやり眺めているうちに、こんなに早い時期からお腹いっぱい食べて大丈夫なのだろうか。
太りすぎて体が重くなり長距離をしっかり飛行できなくなったりして。
それより前に食べ過ぎで肥満関係の病気にならないのだろうかなどと、しばし“余計なお世話”が浮かんは消え、消えては浮かんでいました。

 辻蕎麦の打ち手一同はより美味しい蕎麦をお届けするため、さらに精進を重ねて参ります。
今年も宜しくお願い申し上げます。

(2020/01/30)

2019年11月~12月 辻蕎麦便り

霜月。
季節は巡る。
地球温暖化で年ごとに異常気象が異常気象でないような気がしてきています。
それでも時はしっかり刻んでおり、ことしも降雪のシーズンを迎えました。
山形や天童などでは今月末になって、早朝の庭先や家々の屋根に白いものが目立つようになってきました。
蔵王連峰をはじめ朝日連峰、月山などで出羽三山も真っ白な頂がまぶしく感じられます。

 外の景色が白一色になる日も近いのですが、そんな中でほっこりさせてくれるのが干し柿です。
昔ほど多くはありませんが、軒先に縄のれんのように暖かそうな柿色が連なっているのを眼にすると幼心に帰るような気がしてなりません。
以前にもここで触れたことがありますが、剪定どころか収穫もしない「荒れた柿の木」が随分目立つようなってきました。
手間暇かけて干し柿を作るより、ケーキを買ってきた方が簡単で美味しいものを口にできる、といったこともあるのでしょうが、やはり超高齢化社会が色濃く反映しているようです。
所有者が高齢で樹木の手入れができなくなり、伸び放題に伸び、収穫もままならなくなってしまったというところでしょう。
日本の原風景のひとつともいえる干し柿の縄のれんが産地以外では姿を消すかもしれません。
ちょっと寂しい気がします。
もっとも幼い時からそのような光景を目にしたことのない人々にとってはぴんとこないかもしれませんが。

 異常気象といえば、今月わがささやかな菜園で珍事が相次いで起こりました。
恐らく掘り残したと思われるジャガイモが葉物野菜の畝で数本芽を出し、どんどん成長したのです。
最初は「なんで今ごろ」と首を傾げましたが、邪魔にならないので放っておきました。
当然のことながら追肥や土寄せといった普通のジャガイモ栽培のようなことは一切やりません。
最低気温がマイナスに突入する寸前に、このままでは枯れるだけだからと引き抜いてみました。
なんとピンポン玉を一回り大きくした「新ジャガ」が数個出てきました。
山形盆地では4月中旬から5月頃に種芋を植えて、7、8月に収穫するのが一般的です。
まさか11月下旬に「新ジャガ」を収穫できるなんて。
せっかくなので蒸していただきましたが、ほくほく感があり、味は凝縮されて濃厚でした。

 秋になって芽が出たのはジャガイモだけでなく、トマトもあちこちに出てきて茎を伸ばしていました。
こちらはさすがに花を咲かせたり実をつけるまでにはいきませんでしたが。
花を咲かせたのはサヤエンドウ。
白い花を次々に開かせ、楽しませてくれました。
もっとも最低気温が急激に下がり、月末までにはいずれも自然の摂理に戻ってしまいましたが。
来年以降もこうしたことがあるなら、ちょっとやってみたいことも出てきています。
菜園の野菜たちは異常気象でいろいろ傷めつけられましたが、楽しみも残してくれたようです。

 いよいよ師走。
辻蕎麦の工房では、新たな年に向かい幸多かれと期待と希望を込めてお召し上がりになる最高の年越しそばをお届けするため精魂込めて作業を続けております。

<2019年11月30日>