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2023年 9月~10月号 辻蕎麦便り

「暑さ寒さも彼岸まで」。
今年ほどこの慣用句を実感させられたことはなかったかもしれません。
今夏の記録詰めの猛暑を引きずり、9月に入っても最高気温が連日30℃を超し、最低気温も22~23℃前後で推移。
しかも湿度が高いのか、空気が肌にまとわりつくようで、山形盆地の爽やかな初秋とはかけ離れたものでした。
ひょっとしたら秋を飛ばして真夏からいきなり初冬になるのではないかなどという突飛な考えが頭をかすめたりして。

それが彼岸の入りの20日以降、その直前までとは打って変わって秋めいてきました。
最高気温が25℃前後、最低気温は一気に12、13℃まで下降。
蒸し暑く寝苦しい夜を過ごしていたのに、一転して明け方などは肌寒さを覚えるほどになりました。
あまりの急変に体も容易に対応できません。1日の寒暖差がやたら大きいので、長袖か、半袖かなど衣服を選ぶのも一苦労です。

高温障害などで生育不良に見舞われていた野菜たちですが、中には気温が下がるにつれて元気を取り戻したものも。
わが菜園で目立つのがコリンキー。
山形県生まれの主に生で食べるカボチャです。
サラダや浅漬けなどにしますが、皮はきれいなレモンイエローで、さくさくとした爽やかな歯ざわりが楽しめます。 
  
例年通り、5月の連休後に定植し順調に育っていたのですが、なぜか花芽が極端に少ないのです。
しかも受粉し果実が膨らみ始めても、大きくなる前に腐れてしまうのです。
どうやら高温で果実の細胞が痛めつけられて腐食するようです。
今年の収穫はもう無理と諦め、今月上旬にそろそろ蔓を撤去しなければと考えましたが、あまりの暑さに作業を断念。
放置したままの蔓は空きスペースで縦横に伸びていました。
ところが気温が下がりだしてからは、受粉して誕生した小さな果実が腐食することもなく、食卓にのぼるサイズに成長。
まさかこんなことになるなんて、何が幸いするか分かりません。

もっともこれは珍しいケースかも。
多くの農作物が高温、さらに地域によって極端な少雨によって大きな被害が出ているようです。
山形の秋の風物詩「日本一の芋煮会」が17日、4年ぶりに通常開催されましたが、実行委員会では材料のサトイモの調達に苦労したようです。
このイベントで提供されるサトイモは毎年、山形市総合スポーツセンター近くの畑で栽培されています。
その前を時折通り掛かるので、車中から成長ぶりを眺めていますが、今年は様子が変でした。
例年に比べて茎の背丈が短いし、葉も小さいのです。
大丈夫なのかな、と心配していたら、例年の80%ほどしか収穫できなかったとかいうことです。

結構長年にわたりここで栽培していますが、これまでこんなことは記憶にありません。
「野菜の値段が上がってきている」というニュースが目立つようになりました。
秋冬物野菜はどうなるのでしょうか。
物価高の中、これ以上、家計を直撃しないよう順調に育ってと願うしかありません。
(2023/09/29)

2023年 8月~9月号 辻蕎麦便り

葉月。

 「えっ、そんなことあるの」。山形県の中央部にそびえる標高1984㍍の霊峰月山。真夏でも年によっては雪渓で涼を楽しめるほどのわが国でも有数の豪雪地です。山腹の雪が解けて地表から浸み込み、時を経て湧き出す水が多くの山形県民の生活を支えています。その山頂にある月山神社本宮と山頂山小屋が水不足に陥り、活動に支障を来たしているというのです。

 28日に掲載された山形新聞の記事によりますと、神社と山小屋は雨水を濾過して炊事やトイレ用水を確保していますが、この夏の猛暑と少ない降水量のために水不足で通常営業が出来なくなりました。神社も職員の人数をぎりぎりまで減らして対応しています。7月1日の山開き直後は悪天候だったものの、その後は快晴続きで次第に水が不足してきました。ヘリコプターで運ぼうとしても、燃料費の高騰で難しく、山小屋では予約客を断ったり、神社では本宮の職員を最低限まで減らしています。山小屋は今年で78周年になりますが、こんな事態は初めてだということです。

 山形市街地から見ていますと、今月に入り月山は雲に覆われている日々が続き、山容に接することは少なかった気がします。そんな中で、まさか水不足に見舞われているとは、全く想像できませんでした。月山には何度も足を運び愛着のある山だけに、雲の向こうの異変に心配が募ります。

 異変は山の上だけでなく、わがささやかな菜園でも。猛暑日続きで1日の平均気温が27~30℃とあっては、人もおかしくなりますが、野菜もただでは済みません。枝豆を収穫して湯がいたところ、莢は膨らんで見えたのに“豆”がないのです。まさかお湯の中で、豆が溶けてしまったのでは。狐につままれたとは、こんな感じですかね。例年と違った栽培をしたわけでもないし、と首をひねっていたら、「猛暑の影響で枝豆農家に打撃」のニュースが。少雨と高温で生育不良になったようです。庄内地方は有名な「だだちゃ豆」の特産地。専業農家は大変ですよね。

 この気候は秋冬物野菜の播種にも大打撃を与えています。ニンジンの種を例年通り黒マルチの穴に蒔きましたが、発芽期間をはるかに過ぎても全く音信不通。一緒に蒔いたビーツも2本の発芽を確認しただけです。ニンジンの発芽に畑地の湿りは欠かせないので、炎天下、晴れ渡る空を恨めし気にながめながらせっせとバケツで水を運びましたが、徒労に終わりました。黒マルチで地中の温度が上がり過ぎ種がおかしくなったのでしょう。播種の適期を過ぎてから黒マルチなしで蒔き直し、ようやく少しずつ芽がでてきていますが、降雪期の前までに果たしてどこまで大きくなるやら。

 このほかにも、柿の実が次々と落下したり、カボチャの着果数が極端に少ない上に大きくならなかったりなど影響は広範囲に。いずれも初めて経験することなので、「?」マークが頭の中を駆け巡ります。最終的には、枝豆同様テレビのニュースでこれらのことに専業農家が困っている様子を見て、やはりそうだったのかとうなずく次第です。

 この猛暑、少雨が地球温暖化による異常気象がもたらしているものか、それとも今年だけのものか分かりません。いずれにせよ、これまでのやり方が通用しなくなってきているのを痛感させられる夏でした。(2023/08/30)