「辻蕎麦便り」タグアーカイブ

2019年6月~7月 辻蕎麦便り

 水無月。

「えっ、こんなにお酒に弱くなった」。
そろそろ寝ようかと立ち上がった瞬間、足元がぐらっと揺れるような感じがしました。
晩酌をしたものの、酔いを誘うほどの量ではなかったはず。
体のどこかがおかしくなったのかな。
ほんの一瞬でさまざまなことが頭を駆け巡りました。
今月18日午後10時22分。
その途端、あの恐怖感をあおるようなスマホの緊急地震速報の音。
地震か。
揺れが次第に激しくなり、いつまでたっても収まらない。
実際は短時間だったのでしょうが、やたら長く感じました。
自分の足元がこんなに揺れたのは、2011年の東日本大震災以来のことです。

 ほどなく震源地がわが山形県沖でマグニチュード6.7というニュースにびっくり。
各地の震度を伝える速報では、新潟県村上市府屋が6強、山形県鶴岡市温海川が6弱、山形、新潟の日本海側が軒並み5強と5弱。
まさか庄内浜沖の海底が震源地になってこんなに強い地震が発生するなんて。
もっとも秋田県沖でも、新潟県沖でも発生しているのだから山形県沖だけ例外なんてことはないんでしょうね。

 県外に住む友人、知人から相次いで安否を確かめるメールや電話が入りました。
東日本大震災時の体験がしっかり脳裏に刻み込まれているためか、大規模災害の時にはあっという間に電話やメールが通じなくなるとばかり思っていました。
これ以上強い地震なら分かりませんが、少なくとも今回は通信手段が奪われるということはありませんでした。
東日本大震災以降、相当に改善強化されたんでしょうね。
いざという時にネットワークがしっかり生きているというのは本当に有難く、心強いものです。

 今回の地震で山形市や天童市周辺は被害がほとんど無かったようです。
日本海側の被災された方々にお見舞い申し上げますとともに、被災地の一日も早い復興を願っております。

 サクランボの季節です。
全国の70%の生産量を誇るさくらんぼ王国では、農家が連日出荷作業に追われています。
そんな中、新しく開発された品種が話題になっています。
山形県が開発したもので、直径が3㌢前後もある大玉で、糖度が20度以上と佐藤錦並みの甘さがあります。
「やまがた紅王(べにおう)」と名付けられ、2022年に先行販売、2023年から本格販売を始めるということです。
収穫期は佐藤錦が終了する6月下旬から7月上旬までということですが、実際どんな味なのか、今から楽しみにしております。

<2019/06/28>

2019年4月~5月 辻蕎麦便り

卯月。

みちのくにも遅い春がやってきました。
使い古した表現で失礼ですが、それだけ春が待ち遠しいということです。
春はやってきたのですが、暖かさと、青空はなかなか長続きしませんね。
「三寒四温」という言葉がありますが、そろそろ「四温」だけにしてほしいものです。

ことしの山形や天童周辺の“桜花爛漫”の時期は、嬉しいくらいに青空が広がりました。
毎年全国ニュースになる「日本一の芋煮会」会場の馬見ヶ崎川河畔の道路の両側に、約2㌔にわたって200本を超えるソメイヨシノが植えられていますが、年々、桜のトンネルがしっかりしてきています。
このトンネルは、単に桜の枝が両側からかぶさっているだけでなく、花房と花房の間から純白に光り輝く月山や朝日連峰の山並みが見えるのです。
青空、純白の頂群、それに淡い紅色が織りなす光景を想像してみて下さい。
道路は上下線ともどこまで続くのと言いたくなるほどの車の列です。
これだけの渋滞、普段なら冗談じゃないよと腹立たしくなるところですが、この時ばかりは嬉しい限り。
用事のある人には申し訳ないが、車中からのお花見はゆっくりに限ります。
恐らく9割くらいの車はゆっくり賛成派でしょう。

山形市内に全国のお城で5番目の広さを誇った跡地の霞城公園があります。
ここも城内からお堀端にかけて桜の大木で埋め尽くされました。
そんなオーバーなと思われるかもしれませんが、満開の時期はそう見えるのです。
以前はそれほどでもなかったのですが、ここ数年、花見客が急増。
長い年月、お城の花を見ていますが、東京の上野公園とまではいかなくても、桜の下は人、人、人。
こんなに大勢どこから来たのかと思わず問いたくなるほどです。
近年は海外からの客も増えているといわれていますが、そのうち、いろいろな国の言葉が飛び交うお花見になるんですかね。
それはそれで楽しいような気がしますが。

もうひとつの山形の春の楽しみは山菜。
恐らく全国有数の、いや全国一の山菜王国ではないでしょうか。
収穫量ではなく、食べる種類の数ですが。
早々に友人が山里の南斜面で採ってきたとワラビを届けてくれました。
さらにささやかなわが菜園に植えてあるアケビの新芽「木の芽」、その蔓の先端の柔らかい部分である「ヨリデ」、村山地方で「ナンマエ」というミツバウツギなどを摘み、軽く湯がいて食卓へ。
クルミをちょっぴりのせ、醤油をかければ冷酒にとってかけがえのない友です。
それに山菜そばや山菜てんぷらが美味しくなる時期。
山形は春の香りと味を存分に楽しめるところでもあるのです。

2019年04月29日