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2016年10月 辻蕎麦便り

神無月。

 「実りの秋」という言葉が目の前に限りなく広がっています。
黄金の海では大型機械がスイスイと動き回り刈り入れに余念がありません。
山形県は柑橘類を除いて何でもとれるというフルーツ王国。
それに山の幸も加わり、あちこちの産直施設をのぞくと地元の果物や野菜、キノコ類であふれています。
 
もっとも店内は品物があふれているだけでなく、近県から駆け付けた買い物客などであふれかえり、土日祝日などは大都市の通勤時のような混雑ぶり。
“爆買い”も中国人の専売特許ではありません。
リンゴやブドウ、柿などを親戚、友人知人に送るため1人で5箱、10箱と買って、せっせと宅配伝票に記入しています。
家族連れならこの量がさらに増します。
幾段にも積み重なった段ボール箱が瞬く間に低くなっていく。
すごいエネルギーと迫力です。
いつの間にかこうした光景が山形の秋の風物詩になってしまいました。

 ブドウといえば、山形県内には12のワイナリーがあります。
地元産のブドウを原料にしているのが特長で、品質も高く、日本で開かれるサミットのパーティーで使われるほどです。
各種コンテストなどでも結構活躍していますが、知名度がなかなかアップしないのが残念です。
ワインを1.8ℓのガラス容器に詰めたいわゆる“一升瓶ワイン”。
各ワイナリーでこぞって造っていましたが、近年徐々に姿を消しつつあります。
“一升瓶ワイン”は値段が安く、ファンは結構多いのにと不思議に思っていましたが、先日謎が解けました。
ワインを中心に扱っている酒屋さんで雑談していたら、「デラウエアの争奪戦がおきているのを知ってる?行政が付加価値の高いブドウ作りを指導しているので、農家は値段の安いデラウエアをやめてシャインマスカットなど高級品種にどんどん転換しているの・・原料のデラウエアを確保できないワイナリーは“一升瓶ワイン”造りから撤退せざるを得ないんだって」・・と。
なるほどそういうことか。
理由は分かったが、安く美味しいワインが次々と姿を消すのはなんとも侘しいし、釈然としない。

当然のことながら新蕎麦の季節でもあります。
今年は北海道が台風によって大きな被害が出て、これがどう影響してくるか心配なところでもあります。
収量の減少は否めませんが、作柄は平年並みのようです。
新蕎麦といえばその色と香りでしょう。
薄緑色がかった蕎麦粉は、まるで赤ちゃんの柔肌に触れているようです。
時間を経た蕎麦粉とは感触が全く違います。
それに粉をかき混ぜているときの馥郁たる香り。
これはお客様には申し訳ないが、打ち手の特権でしょう。
蕎麦の香りだけは、打ち手は鼻で、お客さんは噛みしめた後に口腔から感じていただくしかありません。

これからお届けするのはすべて新蕎麦です。
それぞれの蕎麦粉の良さを最大限引き出すよう懸命に努めておりますので、存分に味と香りをお楽しみください。

>>やまがた辻蕎麦HP ブログ

2016年9月 辻蕎麦便り

長月。

リオ五輪のメダルラッシュで日本列島が連日興奮の渦に巻き込まれていたせいでもないでしょうが、ことしの夏は例年になく暑かったように思います。
おまけに台風が相次いで発生。11号が最初にやってきて、次に9号、そして10号と、発生時期と来襲時期がまったくばらばら。
日本列島の上空はどうなっているんだろうと思っていたら、10号が観測史上初となる東北への直接上陸を果たしただけなく、各地に甚大な被害をもたらしました。収穫間近な果樹農家などはうらめしげに空をながめながら防止策を施していましたが、山形県はさほどの被害もなく済みました。

台風はともかく、田んぼを吹き渡って来る風の柔らかさは例えようもありません。
これは田舎暮らしと都会暮らしをして初めて気付くのではないかと思います。
田舎暮らしだけだと、毎日のことで慣れっこになってしまい、「きょうは少し風があって気持ちがいいな」で終わってしまいます。
田んぼのない都会暮らしでは分かりようもありません。
真夏にビル街の暮らしから田舎に戻る際、列車の車窓から稔り始めた穂をかすかに揺らしながら流れる風が緑色に染まっているように見えるときがあります。
実際、田舎道で肌に触れるこの「緑の風」の心地良さは格別です。

9月に入り、「緑の風」に替わって「白い風」が吹くようになりました。
ご存知のように蕎麦の花です。
真っ青な空に下で果てしなく続くソバ畑を見ていますと、大きなうねりの真っただ中にいるような気がします。
山形県の蕎麦の作付面積はことしも増えたような感じです。
耕作放棄地だったところがソバ畑になっているところもあり、こうした光景を見ていると思わず嬉しくなります。

本格的な新蕎麦の季節も間もなくです。
毎年、この季節になると、辻蕎麦の本質はとか、他の蕎麦にはない特長はなにかなどが浮かんでまいります。
風味などというものは、言葉で表現するのはなかなか難しいものです。
ただ蕎麦本来の甘みとかコクなどは普通の人でも味わい感じ取れます。
辻蕎麦主人が40年近く研鑽を積み、より多くの人が本当に美味しいと感じ取れる蕎麦粉を開発しましたが、これが辻蕎麦最大の特長だといえます。
他の蕎麦と食べ比べてもらえれば、その違いは歴然です。
他では真似のできない蕎麦粉に辿り着き、それを最も美味しい状態に仕上げて、味の違いの分かるお客様に提供する、これが辻蕎麦です。
本当に美味しい蕎麦がより美味しくなる季節がやってまいります。
ぜひ期待してお待ちください。

>>やまがた辻蕎麦HP ブログより