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整形外科との上手なつきあい術


高木整形外科クリニック
院長 高木  信博(たかき・のぶひろ)


酒田市で開業する庄内が大好きな整形外科医。リウマチ、リハビリテーション、温泉療法も勉強中。日本整形外科学会では10月8日を「骨と関節の日」とし、この時期に毎年テーマを決めて全国各地で記念行事を行っています。

998-0842 酒田市亀ヶ崎7-1-30 TEL:0234-23-2300
http://www.e-yamagata.com/eyamab/0234232300/


高木整形外科クリニック

高木 信博 先生

みなさんは整形外科ってどういうところかご存知ですか?
上手なお付き合いしていますか?



とある小春日和の午後、銀行のロビーでうとうとしていると、ひそひそ話が聞こえてきた。どうやら近所の八っつぁん熊さんも来てるらしい。


「この間手をけがして、どこへ行けばいいか悩んでね。整形外科ってよく聞くけど、あれは顔をきれいにしたり、目を二重にしたりするやつとは違うんだってねぇ。」
「それは、美容整形だよ。普通の外科と違って、整形外科は骨や関節とかの専門らしいよ。最近、タバコ屋の隣にできたやつだよ。」
「じつはものは相談と、傷を診てもらうついでにそこの先生に持病のことを聞いてみたんだ。」
「なーんだ、ちゃんと専門に行ったんだ。持病って腰だっけ?」
「最近また痛くてね。そこの若先生がどうしたって聞くから、腰が痛いんだ、朝、起きる時に痛くて、他の病院で薬をもらったが全然良くならねぇって…。いかに痛いか、こと細かく説明してやったんだ。痛いのはいつからだって聞くから、ずっと前からだって言ってやった。そしたら、具体的にはいつごろからかって言うから、また言ったんだ。ずっと前からだって。」
「…」
「で、原因で思い当たることはあるかって聞くから、特別何もないって言ってやった。じゃぁ仕事はなんだとか、痛くなった前の日はどうだったとか、興信所みたいに誘導尋問みたいなことを言いやがる。そういえば痛くなった前の日は仕事が忙しかったかなぁ。」
「…」
「足はしびれるかって聞くから、足はそんなんではないんだ、腰が痛くて痛くてって…同じ事をもう一度詳しくしゃべってやった。あの医者物覚え悪いんじゃないかぁ。」
「ちょっと待ちなよ、八っつぁん。違うんじゃないかい。大事なことは『いつから』痛くなったか、その原因として『思い当たることがあるかどうか』じゃないかい。」


 患者になったときに大事なことは、医者の質問に、いかに正確に要領良く答えられるかです。あなたにとって大事なことも、治療においては無駄な情報であることもあり得ます。あなたが言い忘れたことは、医療にとって必要な情報であるかもしれません。

◎ 良い例
医者 「どうしましたか」
患者 腰が三月ごろから痛いんです。少し重いものを持った気がするんですが。」
医者 「足のしびれはありますか。」
患者 「ありません。」

 これで、医者の必要とする情報は得られます。たった二つの会話です。腰であればこれに職業が関係します。八っつぁんの例は標準的で、患者さんの九割はこんな感じ。悪くはないのですが、医者が必要とする情報を得るのに、かなりの会話が必要で、大切な診察時間が無駄になってしまうことも多いのです。いつから痛いのかと聞かれた場合に、「ずっと前から」では困ります。発症の原因と期間で、医者の考え方や治療法が大きく変わります。いかに無駄な修飾をとって、大事な事
を伝えられるか。難しいのですが、要領の良い、賢い患者さんになって、うまく病院を利用してください。


数日後、八っつぁん熊さんのところにお茶を飲みにやって来た。


「例の若先生、頑固でイケねぇな。」
「あの整形外科のかい?どうしたんだい。」
「今度は膝が痛くなって、ちょいと行ってみたんだよ。そうしたらいろいろ触ったあと、水がたまってるって言いやがるんだ。」
「そりゃ大変だったな。で、どうなった。」
「どうすんのか聞いたら、痛かったら水を抜きましょうかって。しばらく前、角の植木屋のご隠居が苦労したって聞いてるからたまげてさ。こっちは噂を知っているからなぁ。」
「え、どんな噂だい?」
「知らないのかい。膝にたまった水を抜くと癖になるっていうやつだよ。最初に医者が水を抜くから何度も水がたまるんだ、ゆめゆめとっちゃいけねえって、ご隠居も言ってた。でもその事を若先生はちょいと違うと言うんだ。」
「若先生はなんて?」
「水がたまるのが癖になるってのは本当らしい。」
「じゃ、八っつぁんが言う通りなんだ。」
「いや、ちょっと違うんだ。水がたまるのが癖になるだけで、水を抜くのとはあまり関係がないらしいんだ。」
「ん、もうちょっと、詳しく教えてくれ。」
「水がたまるのは炎症が起きるからだそうだ。風邪や花粉症で、鼻炎が起きて鼻水が出るのと同じ理屈らしい。誰でも鼻水が出たら鼻をかむわな、でも鼻をかんだからって風邪や花粉症が治るわけじゃないよな。風邪や花粉症を治さない限り、鼻水は止まらず出っぱなしっていう訳だ。」
「とすると、膝の炎症が治ると水はたまらなくなるってことかい?」
「そう、薬を飲んだり安静にしたり…だってさ。水がたまると関節がパンパンに膨らんで、その緊張で痛みを出すんだって。だからあんまり痛かったら抜いたほうが楽になるんだ。」
「そうなんだ。で、どうしたんだい。」
「知っての通り、根っから怖がりで注射は大嫌い、結局水は抜かなかったよ。」
「お前さんも相当頑固だよ。」


膝の水を抜くと癖になるという噂は、患者さんからよく聞きます。これは、膝が痛くなって医者に行ったら水がたまっていた。で、言われるままに水を抜いてみたが、しばらくして、また水がたまって水を抜く羽目になった。よく考えてみたら、最初に水を抜くまでは一度も膝に水がたまったことはない。こんなに何度も水を抜くようになったのは、最初に医者が水を抜いたからだ、ということのようです。この噂、どこかおかしいですよね。
 みなさんの周りにも、たくさんの整形外科医がいます。どうぞ気兼ねなく、疑問、質問をご相談ください。
【荘内銀行情報誌『凛』20 2006新年号 より転載】


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