「あんべみる」とは塩味をみる、つまり味加減をみるという意味である。
今年の夏、鶴岡の町では16軒の飲食店が「だだちゃ豆」を200円、「なんぜんじ」を100円という廉価で旅行者に提供する試みを展開している。藤沢文学ファンが、鶴岡を訪ね、海坂藩の原郷を楽しんでいく中で、「少しでもいいから、ちょっとだけ海坂名物の『だだちゃ豆』と『なんぜんじ』を味見したいが、どこに行けば味わうことができるのか分からない」という声に応えようという企画である。
| だだちゃ豆 |
南禅寺豆腐 |
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グレードの高い料亭、割烹ではたとえ夫婦二人でも相当高い飲食代となってしまう。食堂や寿司店でも、手軽な値段で海坂の地元食材を味わえるところが魅力である。今年は二種類のみのテストケースではあるが、夏のこの時期になると、海坂もの作品に度々登場する「小茄子」(地元では民田茄子と呼ぶ)の浅漬けが食卓に上り、また小鯛の塩焼き、
金頭の味噌汁などの海の幸も豊富である。
藤沢作品には海坂の季節の食材がふんだんに登場してくるのがうれしい。
江戸で国元の食べものを思い出しながら恋仲と語る場面は「用心棒日月抄」シリーズでは、さしずめ、海坂の食、望郷編でいうところであろうか。前述の小茄子の塩漬け、しなべ大根の糖漬け、どんがら汁(寒鱈汁)、孟宗筍、栃餅、カラゲ(エイの干物。戻して甘辛く煮て食べる)、しょうゆの実と枚挙にいとまがない。
一方、海坂城下で在郷編としては「三屋清左衛門残日録」に詳しい。
盟友、佐伯熊太との「涌井」での酒肴は、蟹、口細ガレイ、ふろふき大根、温海カブ漬物(酢の物)、ハタハタの湯揚げなどである。これらの中にはちょっとあんべみ亭という訳にはいかず、湯田川や湯の浜温泉の旅館に一泊するか、三瀬の古い旅館宿の昼食でまかなうのが一番であろう。
海坂の味は、ファーストフードに慣れた現代人にとって、スローライフを思い起こすスローフード、地産地消の安心・安全な健康食品ばかりなので、ぜひ、“あんべみでくれちゃ(庄内弁で「味わってみてください」)”なのである。 |